「人手が足りない。でも、新しく人を雇う余裕もない」
小さな会社やお店を経営していると、こうした悩みにぶつかることがあります。求人を出しても、すぐに人が見つかるとは限りません。結局、経営者が仕事を引き受けたり、スタッフの残業で何とか回したりしてしまう。
そんなとき、一度立ち止まって考えたいことがあります。
今ある仕事は、すべて自分たちでやる必要があるのでしょうか。
以前、私が関わった学童保育では、近所の洋菓子店に毎日のおやつの製造と配達をお願いすることで、スタッフの負担を減らしました。一方、洋菓子店にとっては、お客さんの少ない時間帯を使って、定期的な売上を得る機会になりました。
この記事では、その経験をもとに、人手不足を自分たちの中だけで抱え込まないための考え方を紹介します。
負担になっていたのは毎日のおやつの準備
その学童保育は、経営を引き継いだ直後でした。新しいオーナーが仕事を抱え込みがちだったことに加え、人手も足りず、現場の業務が回らなくなっていました。
一つずつ仕事を洗い出していくと、スタッフの負担になっていたのが、子どもたちのおやつに関する作業でした。
- 毎日、何を出すか考える。
- 勤務時間外に、近所のスーパーへ買い出しに行く。
- 買ってきたものを仕分けし、配る準備をする。
一つひとつは、小さな仕事に見えるかもしれません。しかし、何を買うか迷う時間も、スーパーまで移動する時間も、毎日積み重なれば大きな負担になります。
もちろん、おやつの用意も学童に必要な仕事です。ただ、必要な仕事であることと、学童のスタッフがすべて担うべきことは別です。
スタッフには、子どもたちの安全を守り、一人ひとりの様子に目を配る大切な役割があります。おやつの準備まで抱え続けることで、そのための時間や気持ちの余裕が削られていました。
人手不足そのものを、仕事の見直しだけで解消できるとは限りません。それでも、この現場では「誰が、どこまで担当するか」を変える余地がありました。
安く買うためにどれだけ時間を使っているか
おやつをスーパーで買えば、商品の値段を比べながら、安いものを選べます。外のお店に製造や配達まで頼むと、かえって高くつくように感じるかもしれません。
ただ、ここで見たいのは、おやつそのものの値段だけではありません。
何を買うか考え、買い出しに行き、持ち帰って準備する。その間にも、スタッフは時間を使っています。勤務時間外にまで仕事が及べば、負担はさらに大きくなります。
商品を安く買えていても、そのために毎日多くの時間を使っているなら、仕事全体として負担を抑えられているかは、別に考える必要があります。
また、疲れがたまればミスが起きやすくなったり、働き続けることが難しくなったりする心配もあります。こうした影響は、実際に支払うお金とは分けて考える必要がありますが、値札だけを見ていては分かりません。
「いくらで買えるか」に加えて、「用意するまでに誰が、どれだけ時間を使っているか」を見る。
今回の改善は、そこから始まりました。
近所の洋菓子店には別の困り事があった
買い出しの負担を減らす方法としては、ネットスーパーや配達サービスを使うことも考えられます。
そのなかで私が着目したのは、学童から歩いて行ける距離にある、小さな洋菓子店でした。
そのお店にも、悩みがありました。週末や夕方にはお客さんが来るものの、平日の日中は客足が途絶え、スタッフの手や厨房の設備が空いていたのです。
二つの現場を並べると、次のような関係が見えてきました。
学童保育では、毎日のおやつの準備に手間がかかり、買い出しが勤務時間外に及んでいました。求めていたのは、スタッフの負担を減らしながら、おやつを用意できる仕組みです。
一方、洋菓子店では、平日の日中にお客さんが少なく、人手や設備に余裕がありました。その空いている時間を活用して、定期的な売上につなげたいと考えていました。
学童では、毎日のおやつを用意するための時間が足りない。一方、洋菓子店では、おやつを作れる時間が空いている。
そこで私は、学童のスタッフによるスーパーへの買い出しをやめ、洋菓子店に日々のおやつの製造と配達をまとめてお願いすることを提案しました。
学童の仕事を引き受けることが、洋菓子店の悩みを和らげることにもなる。双方にとって、続ける理由のある組み合わせでした。
同じ予算でも使い方を変えると現場が変わる
この連携によって、両方の現場に変化が生まれました。
洋菓子店には、平日にまとまった数のおやつを作り、届ける仕事ができました。お客さんの少ない時間帯を、定期的な売上につなげられるようになったのです。
学童では、毎日のメニューを考える負担と、勤務時間外の買い出しがなくなりました。その分、スタッフは子どもたちに向き合う時間と余裕を確保しやすくなり、働く環境も改善しました。洋菓子店が作るおやつは、子どもや保護者からの信頼にもつながりました。
この事例では、学童の運営予算を増やしたわけではありません。もともとの予算の範囲で、洋菓子店に仕事をお願いする形へ切り替えました。
おやつを買う費用だけで判断するのではなく、準備にかかる手間まで含めて、お金の使い方を見直したのです。
ただし、スタッフの作業時間が減ることと、支出が同じ金額だけ減ることは、必ずしも一致しません。今回の大切な成果は、予算を増やさずにスタッフの負担を減らし、子どもたちに向き合う余裕を取り戻せたことです。
さらに、学童がおやつのために使うお金が、近隣の洋菓子店の売上になりました。地域の中で仕事を頼み合う関係が生まれたことも、この連携の意味だと感じています。
自分たちの仕事を地域の中で見直してみる
この経験から私が伝えたいのは、「何でも外に頼めばよい」ということではありません。自分たちが担うべき仕事に、十分な時間を使える状態をつくることが大切です。
そのためには、社内での分担や作業の進め方に加えて、外の人に頼める部分がないかも考えてみる必要があります。
小さな会社やお店、個人で営む事業でも、まずは次の三つを見直してみてください。創業前であれば、これから自分が担う予定の仕事を並べて考えてみるとよいと思います。
- 毎日、あるいは毎週、繰り返している仕事は何か。
- そのうち、自分や今のスタッフでなくてもできる仕事は何か。
- その仕事を頼むことが、相手にとっても助けになる組み合わせはないか。
外に頼む際は、価格だけでなく、仕事の内容や量、届けてもらう時間、品質などを、双方が無理なく続けられる条件に合わせる必要があります。今回のように子どもの食べ物に関わる仕事なら、アレルギーへの対応や衛生面も欠かせない確認事項です。
こうした条件が合えば、自分たちが負担に感じている仕事が、相手にとってはありがたい仕事になることがあります。
「人が足りないから、今いる人でもう少し頑張ろう」と考える前に、今の仕事をすべて自分たちで抱える必要があるか、見直してみてください。
今回の学童と洋菓子店のように、別々の場所にある困り事をつなぐことで、双方の負担を和らげられるかもしれません。




